東京高等裁判所 昭和32年(ネ)197号 判決
国が国有林野整備臨時措置法の規定に基いてなした国有林野払下処分の取消を求める訴は、右処分取消により相手方の一旦取得した林野所有権の喪失を来さしめることを目的とするもので、その限りにおいては恰も私人間における売買契約の取消を求める訴訟と何等異なる所はないのであるから、それ自体経済的価値を有し、従つて財産権上の訴訟に属するものというべきである。この場合その訴訟物の価額は、右処分が取り消されることにより、原告の法律的地位に及ぼす影響を客観的経済的に評価して算定すべきものと解する。右控訴人の主張に従えば、開田村に対する前記山林の払下処分にして取り消されるときは、競願者にして買受適格を具備する控訴人に対し当然払下処分がなさるべき関係にあり、控訴人は正当にこれを期待しうる法律的地位を回復するに至るというに帰着するから、右訴訟において控訴人の勝訴により受くべき経済的利益は即ち当該山林の価額に相当するものというべきである。それ故受訴裁判所たる長野地方裁判所が別件訴訟を財産権上の訴訟に当るものとして取り扱い、該訴訟物の価額を山林の価額と同額に算定し、これに相当する訴訟印紙額より控訴人が訴状に貼付した印紙三百十円を控除した金四十六万五千九百九十円の印紙不足額の増貼を命じたのは相当であり(若し右訴が財産権上の訴訟であるとすれば、右印紙増貼命令の額が正当であることは、控訴人も争わないところである記録一八丁)、従つて控訴人がその命令に従い印紙の増貼をしたことにより、国に何等不当な利得のあるべき筈はないのである。
(薄根 奥野 山下)